大腸憩室とは
大腸憩室症は、腸の壁の弱い部分が、腸の外側へ向かって袋状に飛び出したもののことを言います。特に上行結腸とS状結腸に多くみられ、一般成人の約20〜25% に大腸憩室を持っており、加齢とともに増加します。多くは一生の間、無症状で経過しますが、憩室に炎症が起きたり、血管が破れて出血したりすると症状が現れます。これらをそれぞれ「大腸憩室炎」「大腸憩室出血」と呼びます。

大腸憩室の原因
憩室ができる主な原因は、腸内圧の上昇と大腸壁の脆弱化です。便秘や加齢、いきみなどで腸内圧が高まると、大腸の壁には血管が通る小さな“弱い部分”があり、そこが押し出されて袋状になります。食物繊維の不足、肥満、喫煙、ストレスなどの生活習慣も関与するとされています。
大腸憩室の症状
憩室自体は無症状ですが、出血や炎症が起こると症状が出現します。
憩室出血では突然の下血(鮮血便)がみられ、通常は腹痛を伴いません。一方、憩室炎では発熱、腹痛が主な症状です。
大腸憩室出血
憩室出血は、憩室の中を通る細い血管が破れて出血します。症状は突然の下血で、腹痛がないのが特徴です。おなかがゴロゴロして下痢だと思ってトイレに行ったら真っ赤な血が出て驚いて来院したというケースがしばしばあります。
診断には大腸内視鏡検査と造影CTが有用です。CTでは出血しているときに検査を行うことで血部位を特定しやすく、内視鏡では内視鏡的にクリップなどで止血処置を行うことが可能です。ただし、検査時にはすでに出血が止まっている場合が多く、出血点の同定にしばしば難渋します。大部分の憩室出血は自然に止血しますが、憩室からの出血量が多い場合には入院、安静、食事制限が必要です。また、再発をくり返すケースが多いため、憩室出血を起こしたことがある方は出血時にすぐに受診できるか、かりつけ医があることが望ましいと思います。
大腸憩室炎
憩室炎は、憩室内に便や細菌が入り込んで炎症を起こすことで発症します。症状は発熱、腹痛で、上行結腸の憩室炎の場合は右下腹~側腹部、S状結腸の場合は左下腹部に痛みが起こります。
診断には腹部CT検査が最も有用で、炎症の範囲や膿瘍の有無を確認します。炎症が落ち着いた後には、大腸内視鏡で他の疾患(がんなど)との鑑別を行います。
治療は、軽症では抗菌薬と食事制限で対応し、多くは数日で改善します。中等症~重症の場合は、入院のうえで点滴治療を行います。膿瘍や穿孔(腸に穴が開く)の場合には手術が必要です。
大腸憩室の分類
大腸憩室は、右側大腸(盲腸・上行結腸)にできる右側型と左側大腸(S状結腸)に多い左側型に分類されます。日本では若年者には右側型が多く、加齢により左側の憩室も増加します。なお、欧米(特に白人種)では 左側型が多く、大腸憩室の発生部位は人種差があるとされています。
大腸憩室の検査方法
大腸憩室自体は症状がないので大腸内視鏡や他の病気の検査で行ったCTで偶然発見されることが多いです。
大腸憩室の自然治癒について
大腸憩室はいったんできると治ることはほとんどありません。大腸内視鏡検査などで大腸憩室を指摘された方は自分が憩室を持っていることを覚えておきましょう。大腸憩室出血や大腸憩室炎を起こして救急外来などを受診した場合に、診断の手掛かりとなります。ただし、頻度は稀なので過度に心配する必要はありません。
大腸憩室の治療方法
大腸憩室自体を治療する必要はありません。大腸憩室出血や大腸憩室炎を起こしたときに、その程度に応じた治療が必要になります。
大腸憩室と食事の注意点
大腸憩室の重要な成因は、腸の内圧上昇です。腸に負担をかけない食生活が大切です。水分を十分にとり、食物繊維を適度に摂取して便通を整えることが重要です。野菜・海藻・果物・大豆製品をバランスよく摂り、便秘を避けることで大腸憩室が増加することのみならず憩室炎や出血の予防につながります。
まとめ
大腸憩室は多くの方にみられ、ほとんどは無症状のまま問題なく過ごせます。しかし、炎症や出血を起こすと腹痛や下血などの症状が現れるため、適切な診断と治療が必要です。憩室そのものは治りませんが、便秘の予防や水分・食物繊維の摂取といった生活習慣の改善により、炎症や出血のリスクを減らすことができます。憩室を指摘されたことのある方は、症状が出た際に早めに受診することが大切です。