痔ろう
痔ろうとは
痔ろう(痔瘻)は、あな痔とも言われます。肛門の周りの細菌感染が原因です。感染の初期段階に肛門周囲膿瘍を形成し、これが痔瘻に移行していきます。
肛門の皮膚と粘膜の境目を歯状線といいます。歯状線には肛門陰窩と言いう小さな窪みがあり、ここから便の中の細菌が侵入して肛門の周りに膿が溜まったものを肛門周囲膿瘍と言います。痛みや腫れが起こり、熱が出ることもあります。お尻の表面の皮膚が自然に破れて膿が出ると痛みは楽になりますが、そうでない場合には病院で皮膚を切開して膿を出す必要があります。
肛門周囲膿瘍の膿が出た後、細菌の入口(肛門陰窩)と膿の出口が細いトンネルで交通してしまうことがあり、これが痔瘻です。30〜40%の肛門周囲膿瘍が痔瘻になるとされています。痔瘻になると強い痛みが起きることは稀ですが、トンネルの出口から膿がでるので下着が汚れることがあります。
治療について
痔瘻は自然に治ることはなく、手術が必要です。再感染を繰り返すとトンネルの走行が複雑化して、肛門の機能に悪影響を与えてしまうことがあるため、あまり長期間放置せずに手術を受けていただくことが望ましいです。手術方法は痔瘻のタイプに応じて選択されます。
- ① 瘻管切開開放術
- 比較的皮膚から浅いところにあるシンプルなタイプの痔瘻に対して行います。最もポピュラーな術式です。瘻管を切開して開いた状態にします。縫合せずに自然に肉が盛り上がって創を傷が治ります。再発率が低く、確実な方法です。
- ② シートン法
- 痔瘻のトンネルないにゴム紐を通して、ゴムの締め付ける力を利用してトンネルを徐々に切開します。括約筋へのダメージが少ないのが利点ですが、1-2週ごとに通院が必要で、治癒までに時間がかかるのが欠点です。複雑な痔瘻、細菌感染が組み合わさっている痔瘻に用いられます。
- ③ 括約筋温存術
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括約筋(肛門を閉める筋肉)の中を複雑に走行する痔瘻を、安易に切開開放してしまうと、括約筋のダメージが大きくなってしまう恐れがあります。複雑痔瘻に対して肛門機能絵の影響を極力少なくするために、さまざまな括約筋温存手術の術式が考案されています。当院および西新井大腸肛門科グループではSubcutaneous Incision of Fistula Tract and Internal Sphincterotmy (SIFT-IS法)を積極的に用いて、肛門機能へのダメージを最小限にするよう取り組んでいます。